つなぐものとしての絵本「いないいないばあ」 佐々木 宏子

■松谷みよ子■ 【いないいないばあ】

おとな(読み手)が絵本を開いて「いないいないばあ」と語りかけると、あかちゃんは笑います。

くり返しおとなが「いないいないばあ」と語りかけると、あかちゃんはくり返し笑います。
あかちゃんが笑うと、おとなも笑います。
あかちゃんの笑いとおとなの笑いがとけ合い心が結ばれます。
今度は、あかちゃんが「ばあ」と語りかけると、おとなは笑います。

おとなが驚きと幸せのジェスチャーを交えて、絵本のなかで「いないいないばあ」をするくまを指さしながら、「くまちゃんくまちゃん」と語りかけると、あかちゃんはあかちゃん語で自分の心を語りはじめます。
絵本を開きながらジェスチャーをとおして、言葉の抑揚・音韻・リズムをとおして、向き合う者のふたつの心は通じ合い、そのくり返しのなかでお互いの理解と信頼は育まれていきます。
『いないいないばあ』は、一方的で人工的なマスメディアによる子どもの文化財が氾濫するなかで、あかちゃんの絵本の原点のような存在となりました。
あかちゃんが人となるためにもっとも大切なこと、多くの人とうまく関係を結ぶための基本的なレッスンを促します。
裏返せば、おとなにとっては、まだうまくコミュニケーションのとれないあかちゃんの心を理解し、どのようにすれば楽しくつき合えるかを学ぶテキストにもなるのです。
絵本をとおしてくり返される「いないいないばあ」の世界は、やがて日常の多様で複雑な人と人とのコミュニケーション能力を育んでいきます。
そして、あかちゃんは毎日新しい人と出会うなかで「いないいないばあ、いないいないばあ」と日常の扉を開け、新しい顔や言葉を作り人生を歩んでいくことでしょう。

 

佐々木 宏子・プロフィール

鳴門教育大学名誉教授。
専門は絵本の主題分析による乳幼児の現代的発達理論の構築。
絵本の主題分析を通して発達心理学の中に新しく、「絵本の心理学」を構築する。
幼稚園と小学校の連携をはかるための新しい教育課程の創出や幼小の発達の連続性が保証されるカリキュラム開発を手がけている。
 


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